日付のない便り

日々のとりとめのない覚書 映画や読書 そして回想

文学

こんな映画、あんな本  ここ一週間で観たり、読んだり

別に気に入らなかったわけでも、面白くなかったわけでもないのに、ブログの記事にするタイミングを逸してしまう「こんな映画、あんな本」がある。

良きこと、悪しきこと  今日という一日      

良きことと悪しきことは、大方折り重なるようにやってくる。昔からそうだった。ただ、昔と違うのは歳を取ってからは良きことと悪しきことのサイズが釣り合わなくなったことだ。

秋聲の鏡花追悼文   

文豪とアルケミスト 注文していた本が届いた。 marco (id:garadanikki) marukoさんに教えていただいた本だ。 garadanikki.hatenablog.com

眠れないので、短編小説を読んでいたら、三つ目で眠くなった。 井伏鱒二『へんろう宿』太宰治『富嶽百景』坂口安吾『波子』を読む

私は、軽い睡眠障害があって、それにも増して、右膝の状態が悪く、床についても簡単には眠れない。昨晩はそれが酷かった。そこで、モゾモゾ、起き出してポプラ社の分厚いアンソロジー『百年小説』を引っ張り出した。

徳田秋聲覚書 『和解』を読む  私小説の悦楽

私は事態の容易でないことを感じた。T―自身にもだが、T―の兄のK―氏に対する責任が考へられた。たとひ其れが不断何んなに仲のわるい友達同志であるにしても、T―の唯一の肉身であるK―氏の耳へ入れない訳にいかなかつた。T―は兼々この兄に何かの助力を乞…

詩人との邂逅

もう半世紀近くも昔になろうか。 神田の古書街の昼下がり。 私は、その詩人と出くわしたことがある。 詩人はしたたかに酔っていた。

「世紀の小説『レ・ミゼラブル』の誕生」(デイヴィッド・ベロス著 立石光子訳)を読む   小説の「伝記」? 読み応え十分の力作!  

本書は『レ・ミゼラブル』という「小説」の「評伝」である。一編の小説の評伝というのはあまり聞いたことがないが確かにそうなのだ。部分的には、作品自体の文学評論でもあるし、ヴィクトル・ユゴーの評伝でもあるのだが、全体を通してみれば内容はあくまで…

ここ一週間に読んだ本・読み通せなかった本 「僕が殺した人と僕を殺した人」東山彰良(文藝春秋)「高峰秀子 解体新書」斎藤明美著 (PHP研究所)「逆さに吊るされた男」田口ランディ(河出書房新社」

私は仕事を引退しているので、まあ隠居といってよいのだが、主夫の仕事はしなくてはならず、毎日が日曜日というわけにはいかない。平日の午前中は買い物や父の昼飯の用意、午後は洗濯物を入れたり、夕飯の支度をしたりとなかなか忙しい。なんといっても手際…

山本周五郎「五辯の椿」を読む  復讐劇の仕掛けは…… 

何十年ぶりかの再読である。根気がなくなっている昨今には珍しく、一気に読んだ。若い女の復讐劇。母「おその」とその愛人を焼き殺し、母の遊び相手だった男たちを色仕掛けで惑わせ、次々にかんざしで刺し殺していく。よくよく考えれば、ヒロイン「おしの」…

西村寿行「滅びの笛」を読む  ネズミのパニックの話だが、別の話に思えてきて……

この作者の作品は、一時期続けざまに読んだ記憶があるから、この作品も読んでいるはずだが、うっすらとしか覚えていなかったので新鮮に読めた。中部山岳地帯で大量発生した鼠群と人間との闘いを描いたパニック小説。刊行が1976年。この頃、「タワーリング・…

小野寺史宜「ひと」(祥伝社)を読む  スラスラ読めるのだが……

初めての作家。つい手にとったのは、本の帯につられて。 「本の雑誌が選ぶ2018年度エンターテイメントベスト10 第2位」 「心洗われる、本物の感動で重版続々!!」 「おお、どうしてこんなところで涙があふれてくるのだろう」 ひと 作者: 小野寺史宜 出版社/…

森敦「月山」を読む つまらなくはないが、ではどこが良いのかといわれると……

私が大学生の頃、芥川賞を受賞した作品で、著者の森敦は六十二歳だったので、遅咲きの作家の受賞ということで当時随分話題になったのを覚えている。友人が購入したものを借りたのだが、結局読まずに返してしまった。 今回、この小説を読んだのは個人的な事情…

山本周五郎の短編を読んで、なるほどそうなのかと思ったこと

文春文庫から沢木耕太郎編の山本周五郎の短編集シリーズが4冊出ている。山本周五郎というと新潮社というイメージがあるが、多分著作権が切れた関係なのか、各社から選集だの、文庫本などが刊行されはじめている。 長編全集は何年か前に刊行されたものを持っ…

とりとめのない名前の話など

最近、またポツポツと田宮虎彦を読み返しているのだが、『比叡おろし』という哀切な短編小説を読んでいて、ふと記憶を呼び覚まされる一節があった。それは、全く個人的な記憶であって、作品の中身とも作者の田宮虎彦とも全く関連がない。 主人公の苦学生が、…

一気に読んだのは読んだのだが 彩瀬まる「あのひとは蜘蛛を潰せない」(新潮文庫)を読む 

題名に惹かれて読み始めた。 主人公の梨枝は28歳の独身女性。ドラッグストアの店長で、両親は幼い頃に離婚したため母と二人暮らし。地味で、真面目で、ある意味世間知らずで、男性経験もないし、恋人もいない。その梨枝に年下の恋人ができて、紆余曲折を経…

「百年小説」(ポプラ社)を手に入れた アンソロジーは楽しい!

この本、なにしろ、厚い。1333ページ。見た目は広辞苑というところか。日本の短編小説のアンソロジーなのだが、これほどのボリュームのものはこれだけだろう。とはいっても、作品数はそう多いわけではない。贅沢な作りなのだ。ネットオークションで手に入れ…

私の積ん読状況  「積ん読」にも、一応言い訳がある

連休が終わって、だいぶ経つが、やっぱりというか、予想通りというか、連休中に読もうと、文字通り、積んであった本は、それほど高さも変わらずあちこちに積まれたままである。 ベッドの脇には、高価なのに思い切って買った「竹山道雄セレクション」の第4巻…

半村良「小説 浅草案内」を読む 浅草は近いような、遠いような

半村良の「小説 浅草案内」を読み終わった。先月、馬券を買いに行った帰りに錦糸町の熊沢書店で買い求めたものだ。以前に、図書館で借りて、最初の2篇ばかりを読んで、なんとなくそのあとを読みそびれて返却してしまったのだが、先月、三遊亭円歌の訃報が流…

なぜ、今、「人間失格」なのか  ビックコミックオリジナルで太宰治「人間失格」コミック版の連載が始まったが、

以前は、何種類も買い求めていたマンガ雑誌(青年コミック誌といった方がよいのか)もすっかりご無沙汰になっているが、小学館の「ビックコミックオリジナル」だけは、今も定期的に購読している(これはもちろん理由があるのだが、それはまた別の機会に)。 …

白鳥の弔辞を読む  「白鳥随筆」正宗白鳥 講談社文芸文庫

講談社文芸文庫の「白鳥随筆」をポツポツと読んでいる。巻末に著作目録と年譜が付いているのだが、正宗白鳥は83歳で昭和37年10月に亡くなっている。この本には、同年に発表された文章が3編載せられており、この作家が死の直前まで現役であったことが…

柚木麻子著「BUTTER」を読む 確かに上質な「バター」は濃厚で美味だが‥‥

この作品が、死刑判決が確定した木嶋佳苗死刑囚の首都圏連続不審死事件をモチーフに書かれたものであることは新聞広告で知っていた。私は木嶋佳苗について、ニュースの報道程度しか知識がない。本屋で手に取った時、本の帯の惹句に「獄中から溶け出す女の欲…

酒の歌など  牧水を想う

酒の歌など 牧水を想う 最近、情けないほど酒が弱くなってきた。ちょっと晩酌が過ぎると眠気を堪えきれなくなる。晩酌といっても、せいぜいウイスキーのハイボール一杯とか、麦酒350ml1本程度だ。もともとそう強いわけでもないし、そう好きなわけでもなかっ…

「砂の女」  本棚の片隅に

砂の女 安部公房の「砂の女」を、私は読んでいない。読まなかったのにはちょっとした理由がある。 砂の女 (新潮文庫) 作者: 安部公房 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2003/03 メディア: 文庫 購入: 19人 クリック: 197回 この商品を含むブログ (346件) を…

忘れられた作家  『足摺岬』の行方

忘れられた作家 『卯の花くたし』『鹿ケ谷』『比叡おろし』『菊坂』と目次の順に並べていっても、誰の作品かわかる人はあまりいないだろう。『絵本』『足摺岬』と続くと、私の年代だとああそうかと頷く人もいるだろうが、今も愛読しているとなるとやはりそう…