日付のない便り

日々のとりとめのない覚書 映画や読書 そして回想

『きらきら眼鏡』  どうにも、中途半端で……

見るものすべてを輝かせる眼鏡。それが「きらきら眼鏡」だという。もう若くもないごく平凡な女に、わたしはいつも「きらきら眼鏡」をかけている、と言わせるには、よほどの説得力が必要だろう。私のお気に入りの女優、屈指の演技派、池脇千鶴が演じたのだが…

パンを焼く ついでに外郎(ういろう)も作ってみる 我が家のコロナ事情2

スーパーでパン焼き用の小麦粉を買おうとしたら、日清の「カメリア」が売り切れ。カメリアだけではなく、パン作り・製菓用の棚には何も残っていない。ドライイーストもスキンミルクも空っぽ。ここのところ、通販で国産小麦粉を買っていたのだが、よく使って…

『追想』   回想は甘美にして……

緑したたる田舎道を自転車が二台並んで走ってくる。華やかな揃いのワンピース姿の女と眼鏡をかけた少女。どうやら親子らしい。にこやかに笑いながら、気持ちよさそうに自転車を漕いでいる後ろから、小太りの男が自転車で迫ってくる。その横には、犬も一緒だ…

昼飯の憂鬱  我が家のコロナ事情

巣ごもり生活が続くので、毎日の生活パターンが随分変わった。 まず、昼飯がめんどくさい。 ここ2年ほど、半分、主夫業をやっていて平日の夕飯は作っているのだが、ここ一月、高三の息子がずっと家にいる状態で、これまで昼飯は、95歳の父と自分の食べるも…

新型コロナウイルスによって、突然暇ができた高校生の息子のための映画案内 洋画篇31〜48

Ⅳ おかわり、あと一杯! 洋画篇31〜48 1から30まで見直してみた。うーん。この選択は少しじじむさいか。でも、実際じじいが選んだのだから、仕方がないか。では、最後の一杯はボリュームたっぷり! 31 ジョーズ(1975年 アメリカ)監督:スティーブン…

新型コロナウイルスによって、突然暇ができた高校生の息子のための映画案内 洋画篇21〜30

Ⅲ 洋画 おかわり、2杯目! 洋画篇21〜30 この映画案内、何本選ぶのかということになるが、これは今のところ、48本の予定である。理由は、息子には、最終的に選んだ作品のメディアをケースに入れ渡すつもりなのだが、これが最大48枚収納なので、48…

新型コロナウイルスによって、突然暇ができた高校生の息子のための映画案内 洋画篇1〜20

息子は高校三年生。毎日、家でそこそこの勉強はしているようだが、若者の1日は長い。最近、私が動画配信に加入してから、勉強の合間に、自分でも、利用しているらしい(息子独自のアカウントは設定してある)。 この前、洋画はやっぱり字幕で見るのがいいみ…

詩人との邂逅

もう半世紀近くも昔になろうか。 神田の古書街の昼下がり。 私は、その詩人と出くわしたことがある。 詩人はしたたかに酔っていた。

なぜ、私は家でパンを焼くようになったか  パン焼き顛末記

私は、今のところ主夫業が仕事だから、週に5回は夕食を作る。もともと料理の経験はないに等しい。生来の不器用に重ねて、持病で右手がうまく動かない日もあるから、実は私にとってはけっこうな負担である。しかも我が家は、私と家内の夫婦と息子、それに私…

「世紀の小説『レ・ミゼラブル』の誕生」(デイヴィッド・ベロス著 立石光子訳)を読む   小説の「伝記」? 読み応え十分の力作!  

本書は『レ・ミゼラブル』という「小説」の「評伝」である。一編の小説の評伝というのはあまり聞いたことがないが確かにそうなのだ。部分的には、作品自体の文学評論でもあるし、ヴィクトル・ユゴーの評伝でもあるのだが、全体を通してみれば内容はあくまで…

「アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場」を見る  最新テクノロジー下の戦争はあまりに人間的な……

最近は、どんな映画かとかより、誰が出ているかで映画を選ぶことが多い。この作品もヘレン・ミレンが出演しているので、CSで録画していたのだが、強烈なサスペンスにグイグイと引き込まれた。無人機ドローンによる遠隔攻撃を描いた映画だが、人間同士が直接…

また夢の話。

いくつか前の記事で悪夢の話をした。また夢の話になる。 思いがけない夢を見た。Wという女生徒と教室で面談をしている夢だ。私が中学校でWの担任をしていたのは、もう、30年も前のことなのだが、夢の中の私はもちろん若い。私は、眠りながらクスクス笑ってい…

自転車に乗れなくなった話

自転車に乗れなくなった。持病のせいで、薬の効果が切れると右足に力が入らなくなってペダルが漕げなくなる。無理に力を入れて漕ぐと右によれてしまう。なるべく歩道や広い道を通るのだが、転んだり、電信柱に突っ込んだりした。 それで、自転車は諦めること…

「ひとり狼」(池広一夫監督)を見る  道中合羽に三度笠の雷蔵もすっきりとカッコイイが、映画自体はあまりすっきりとはいかないようで……

雷蔵晩年の作品。相変わらず殺陣での動きはよいが、すでに病に侵された頃なのか、顔は陰影が深い。 「沓掛時次郎」「中山七里」(どちらも未見)に続く、雷蔵と池広監督の股旅物三部作の三作目でけっこう有名らしいのだが、どこかバランスが悪い映画で、セリ…

野球小僧のバトン   NHK「平成史スクープドキュメント 第1回 大リーガー NOMO ~“トルネード” 日米の衝撃~」を観る

番組の最後の方だ。インタビュアーが選手としての晩年の時期について質問をした。 「マイナー・リーグやベネズエラリーグでやったわけですね。あの野茂がというような視線は感じませんでしたか」 野茂は少し怪訝な表情をして答える。 「いや、マウンドに立ち…

わが悪夢の系譜  ちょっと大げさな題名で恐縮ですが……

私はよく苦しい夢を見る。悪夢といってもよい。夜中に、大声をあげたり、長々と喋ったりというのはけっこう頻繁にあって、あまりひどいと家内が揺り起こしてくれる。 3ヶ月ほど前に、それが極端に悪化した。妄想のような夢が多くなった。夢と現実の境が曖昧…

「張込み」(野村芳太郎監督)を観る  美しいモノクロ画面に繰り広げられる緊迫のサスペンス 

昔の映画を見ると、ついついあのころはこんな風だったんだな、というような風俗に目がいってしまう。 『あの頃映画 the BEST 松竹ブルーレイ・コレクション 張込み』 [Blu-ray] 出版社/メーカー: 松竹 発売日: 2015/07/03 メディア: Blu-ray この商品を含む…

庄内柿をいただいて……いつから、柿がこんなに好きになったのだろうか

山形の叔母から父へ柿が送られてきた。父は94歳だから、年は離れているといっても、叔母も85、6歳にはなるのだろう。父が生き残っている兄弟では一番年上だから、3人いる叔母たちは随分気にかけてくれて、それぞれが携帯電話でしょっちゅう連絡してく…

ここ一週間に読んだ本・読み通せなかった本 「僕が殺した人と僕を殺した人」東山彰良(文藝春秋)「高峰秀子 解体新書」斎藤明美著 (PHP研究所)「逆さに吊るされた男」田口ランディ(河出書房新社」

私は仕事を引退しているので、まあ隠居といってよいのだが、主夫の仕事はしなくてはならず、毎日が日曜日というわけにはいかない。平日の午前中は買い物や父の昼飯の用意、午後は洗濯物を入れたり、夕飯の支度をしたりとなかなか忙しい。なんといっても手際…

「妻は告白する」(増村保造監督)  見ているうちに、若尾文子にじわじわと絡め取られていく  

見ているうちに、男が次第に女の用意した蜘蛛の巣に絡め取られるようなゾクゾクした、寒気のようなものを感じてくる。どこかおかしいと思いながらも、糸に巻かれるように、男は身動きができなくなっていく。若尾文子には艶でいて、どこか清潔感のある不思議…

映画「点と線」(小林恒夫 監督)を観る  昔の清張映画もなかなか新鮮なのだが……  それにしても、高峰三枝子は見事なほど美しい。

「点と線」著者の最初の長編推理小説であり、松本清張ブームを巻き起こした作品であり、「ゼロの焦点」とともに、清張初期の推理小説の代表作だが、基本は時刻表トリックを使ったアリバイ崩しのどちらかといえば、地味な作品であり、いまの若い人にとっては…

先崎学「うつ病九段 プロ棋士が将棋を失くした一年間」(文藝春秋社)を読む   こんなに近くにうつ病があった!

闘病記である。私が、滅多に読まないジャンルの本だ。だが、あの「天才先崎」がうつ病?棋界きっての文才を誇る先崎学がうつ病になったのか。本屋の店先で思わず手に取った。10ページほど読んで、すぐにレジに向かった。多才な棋士である先崎学に何が起こ…

山本周五郎「五辯の椿」を読む  復讐劇の仕掛けは…… 

何十年ぶりかの再読である。根気がなくなっている昨今には珍しく、一気に読んだ。若い女の復讐劇。母「おその」とその愛人を焼き殺し、母の遊び相手だった男たちを色仕掛けで惑わせ、次々にかんざしで刺し殺していく。よくよく考えれば、ヒロイン「おしの」…

BS1「アスリートの魂 いつだって その“心”で~大関 栃ノ心~」を観る  にわかファンが、本当のファンになった

秋場所の鶴竜対栃ノ心の取り組みには本当にびっくりした。横綱鶴竜は10戦全勝。カド番大関栃ノ心は6勝4敗。これからの対戦相手を考えるとあとがなかった。立ち合い低くあたった鶴竜は、双差し。絶体絶命の栃ノ心は、肩越しに両上手をとり、苦肉の策とも…

西村寿行「滅びの笛」を読む  ネズミのパニックの話だが、別の話に思えてきて……

この作者の作品は、一時期続けざまに読んだ記憶があるから、この作品も読んでいるはずだが、うっすらとしか覚えていなかったので新鮮に読めた。中部山岳地帯で大量発生した鼠群と人間との闘いを描いたパニック小説。刊行が1976年。この頃、「タワーリング・…

小野寺史宜「ひと」(祥伝社)を読む  スラスラ読めるのだが……

初めての作家。つい手にとったのは、本の帯につられて。 「本の雑誌が選ぶ2018年度エンターテイメントベスト10 第2位」 「心洗われる、本物の感動で重版続々!!」 「おお、どうしてこんなところで涙があふれてくるのだろう」 ひと 作者: 小野寺史宜 出版社/…

加地伸行「マスコミ偽善者列伝 建て前を言いつのる人々」(飛鳥新社)を読む   バッサバッサと切れ味鋭く……

こういう斬られ方をすると、当事者は心身ともにかなりこたえるだろうな、と読みながらなんども思った。 著者は、大阪大名誉教授、加地伸行(82歳)。本書は産経新聞連載のコラム「古典個展(こてんこてん)」等をまとめたものである。著者の専門は中国古典…

NHKドラマ「透明なゆりかご」(第9回)を観る  清原果那に釘付けになる

主演の清原果那は十六歳だそうだ。だが、堂々たる主演ぶりである。このまだ少女といってよい女優から、目を離せない。 「透明なゆりかご」は、産婦人科の過酷な現実を捉えながら、命の価値や意味、親子や夫婦の絆、子育てと生活の現実、医師や看護師の倫理等…

森敦「月山」を読む つまらなくはないが、ではどこが良いのかといわれると……

私が大学生の頃、芥川賞を受賞した作品で、著者の森敦は六十二歳だったので、遅咲きの作家の受賞ということで当時随分話題になったのを覚えている。友人が購入したものを借りたのだが、結局読まずに返してしまった。 今回、この小説を読んだのは個人的な事情…

山本周五郎の短編を読んで、なるほどそうなのかと思ったこと

文春文庫から沢木耕太郎編の山本周五郎の短編集シリーズが4冊出ている。山本周五郎というと新潮社というイメージがあるが、多分著作権が切れた関係なのか、各社から選集だの、文庫本などが刊行されはじめている。 長編全集は何年か前に刊行されたものを持っ…