どこを見ても、「シン・ゴジラ」だが、ガメラは、今、どこにいるんだろう。
ガメラ生誕50周年記念特別サイトで、ガメラ生誕50周年記念映像「GAMERA」を見たが(宮藤官九郎がギャオスに食べられる!)、この短い作品は、ある意味、「シン・ゴジラ」とはまったく違う方向性のようだ。石井克人監督のインタビューを読むと、「平成ガメラ」と「小さき勇者たち~ガメラ~」を足して2で割ったような方向性のようなことを話しているが、「シン・ゴジラ」の示した道に戸惑いを覚える者にとっては、ガメラが今どこにいるのか気になってくる。
ガメラに初めて出会ったのは「大怪獣決闘ガメラ対バルゴン」だった。小学校6年生ぐらいのはずだ。父と一緒に行った。「大魔神」との2本立てだった。今考えると豪華な2本立てだが、映画にはさらさら興味がない父にとっては随分迷惑なことだったろう。
東宝のゴジラシリーズとは全く違う肌触り、暗い色調の中で繰り広げられるストーリーは、「大怪獣決闘」に期待して来た私を当惑させた。物語は、男たちが南洋の島に一攫千金を狙って宝石を探しに行くところから始まる(このあたりは、「キングコング」以来のパターンか)。青い宝石をめぐる小悪党たちのだまし合い。その青い宝石が実はバルゴンの卵で、足の怪我の治療に使っていた赤外線が偶然に照射されて、異常孵化するバルゴン。バルゴンの出す光線に誘われて飛来するガメラ。いつも、どこか唐突に現れるゴジラと違って、このあたりはストーリーがよく練られている。
しかし初めてスクリーンで見るガメラには戸惑った(私は、前作の「大怪獣ガメラ」は見ていなかった)。ゴジラとガメラはまったく違っていた。すでにヒーロー化しつつあったゴジラとは異なるガメラのどこか醜悪な、残忍なイメージは、感情移入が難しかった。バルゴンを湖に引きずり込むシーンでは、ガメラに憎々しささえ覚えた。
かといって、爬虫類めいた外観のバルゴンというわけにもいかない(大体、二足歩行ができない怪獣は感情移入がしにくい)。紫の血には、何か病的な毒々しさを感じた。しかも、バルゴンは人を食べるという残忍さを持っている。
だが、当惑しながらも、私がこの映画にひきこまれていったのは、どこか怪獣のスポーツ大会のようになってきていた東宝の怪獣映画に、子どもながら物足りなさを感じていたのであろう。欲望にとりつかれた人間たちのドラマ。強烈な冷凍光線を持ちながら、水に弱く雨が降ると動けなくなるというバルゴンの設定がもたらすストーリーの面白さ。私はいつのまにかスクリーンに魅入っていた。
その後のガメラシリーズも見に行ったが、結局、だんだん大人の映画の雰囲気はなくなった。一方私が大人になってきたこともあってギロンあたりで見なくなってしまった。
平成の「ガメラ」を見た時は、度肝を抜かれた記憶がある。もともとガメラは、「火を吹いて空を飛ぶ亀」という極めて不自然な、非現実的な怪獣なのだが、この作品でのガメラはあまりにリアルでそういう疑問を抱かせない。出現した三体のギャオスの復活とその残虐さ、空中でのバトルの面白さなど、大人になって初めて怪獣映画に魅了された。シリーズ三部作は、構想の確かさや、レギオン、イリスという新たな敵の存在もあって、多くの人の支持を得た。
2006年に公開された「小さき勇者たち~ガメラ~」も、実はしっかりした脚本をもとに、アイデアに満ちた、子供向けの夢のある映画になっている。主演の富岡涼や夏帆というすぐれた子役の演技の力もあって、なかなか見応えのある出来栄えで、私の息子なども夢中で見ていた。
どんな怪獣映画が良いのかというは、もちろん百人百様だろう。私は、怪獣映画がもたらす恐怖も、戦慄も、想像も、冒険も、勇気も、自分の手の届くところにある、自分の姿が見えるところにある、のが怪獣映画の面白さであるような気がしている。
「GAMERA」で、ギャオスに追われ、ガメラの前にたどり着いた少年の姿は印象的だ。どこか、新しい「ガメラ」を期待させる。
今、ガメラはどこにいるのだろう。
後記
石井監督のインタビューには、「ハリウッド版ゴジラ(『GODZILLAゴジラ』2014))は格好良いけど、あのサイズ(全高108mと設定)だと、ゴジラとビルの間に人がいる感じがなくて、演出的にもちょっとデカすぎるんですよね。」という発言がある。確かに、怪獣の「サイズ」は、映画のコンセプトに関わる大きな問題だといえる。
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