坂田三吉王将の身長はどれぐらいだったのか。
『王将』は何回か映画化されている。
1948年版の板東妻三郎は172cm。1973年版の勝新太郎は173cm。
この1962年版の三国連太郎は178cm。
だが、数字以上に、三国連太郎は大男の印象が強い。
三国連太郎の坂田三吉は、最後までこのサイズの問題が気になった。
本作は伊藤大輔監督による3度目の映画化であり(残念ながら、最も有名な板東妻三郎主演の1948年版は見ていないのだが)、映画としてはこなれていて、どの場面も見応えがある。共演は、三吉の妻小春に淡島千景、娘の玉枝に三田佳子、関根名人に平幹二朗、その他、殿山泰司、花沢徳衛など。村田英雄も出ているし、主題歌は『王将』だ。
特に淡島千景は柄にあっており、好演と言っていい(役柄は違うが『夫婦善哉』を思い出した)。
それなのに、見ていてどうもしっくりこないのである。映画に入り込めない。
三吉は、無学な草履職人。将棋の駒以外は字も読めず、自分の名前も満足に書けない。まさに、赤貧洗うがごとくという生活なのだが、将棋だけは無類に強い。打倒関根に、闘志を燃やすが、将棋以外は無力で、周りに持ち上げられ、いいように利用され、将棋の才能をすり減らしていく。時に、傲慢で、時に、卑屈で、頑固だが、気が弱く、将棋以外は誰かに頼らなければ、生きていけない。
愛すべき男だが、またやるせない哀しみを背負った男でもある。
三国連太郎の坂田三吉はうまい。熱演なのだ。
だが、どうにもサイズが大きすぎる。
晩年の坂田三吉。天才ゆえに味わわねばならなかった人生の悲哀。
あの大きな体からは、それがうまく伝わってこないように私には思えてならなかった。
『飢餓海峡』(内田吐夢監督)で、彼が演じた復員兵は、大柄であるゆえに、嵐の津軽海峡を渡ることも、左幸子にもらった握り飯を頬ばるシーンも、強烈なリアリティがあった。役者には、演技では、賄いきれないものもあるのだと思う。
以前、勝新太郎が坂田三吉を演じる1972年版(堀川弘通監督)も見たのだが、満足はできなかった。
評判の高い、1948年版をぜひにでも見たくなったが。
※原作は北条秀司の戯曲『王将』。