AbemaTVトーナメントの興奮
ついにAbemTVの有料会員になってしまった。
現在開催中の第3回AbemaTVトーナメントが、見たいがためである。
将棋界初の団体戦、ドラフト会議、フィッシャールールを採用した超早指し戦。
ドラフト会議によるチーム編成の斬新さ。まるで手品を見ているような早指し。あわや時間切れ寸前のスピード感。団体戦ゆえの戦略、駆け引き。トップ棋士たちのいずれも劣らぬ強烈な個性。
私の将棋の腕はせいぜい3級か4級あるかどうか、それも今はまったく指さない。一緒に見ることの多い父は、ルールを知っている程度。そんなわけのわからない爺さん二人が、思わず画面に目を奪われてしまうのだ。
AbemTVと日本将棋連盟は新しい鉱脈を掘り当てたと言っていい。
そして、この鉱脈に最初に鍬を入れたのはやはり、若き天才棋士藤井聡太七段であろう。藤井七段がプロになった年にAbema TVトーナメントは始まり、第1回、第2回を連覇している。「炎の七番勝負」と名付けて、トップ棋士7人と藤井の対局を番組にしている。藤井はここでも「6勝1敗」という周囲の予想を遥かに超える結果を出している。
今回のドラフト会議でも、焦点は藤井七段だった。獲りに行くか、闘う方を選ぶか、トップ棋士のプライドと先を見据えた戦略や思惑が絡み合って、つくづく藤井七段の存在の大きさを感じた。
この謙虚で、落ち着いた、だが負けず嫌いな高校生棋士は、現在、圧倒的なポテンシャルと時に老獪ともいえる指し回しで、強烈なパフォーマンスを示している。
語 録
本書は、2018年4月の発売。藤井七段のプロ入りが2016年10月。29連勝が2017年の6月。将棋界にとっては空前ともいえる藤井ブームが一段落した時期であある。手際良くまとめられた藤井聡太七段の入門編であると同時に、にわか藤井ファン、にわか将棋ファンへの手引書といった趣きの小著である。
また、数々の最年少記録を塗り替えたり、新記録を樹立するたびに、彼が発する大人びた言葉が話題になったことから、「語録」を編集の柱に取り上げているからである。
藤井聡太語録
望外
自分の実力をよく出し切れたと思いますし、本当に妨害の結果だったと思います。
『藤井聡太、炎の七番勝負』を終えて
僥倖
自分の実力からすると、僥倖としかいいようがない思います。
20連勝達成後のインタビュー
存在意義
コンピュータの方が強くなったとき、棋士の存在意義が問われてくると感じます。
電脳戦についてのコメント
景色
強くならないと見えない景色があると思います。
現在の目標について尋ねられた際のコメント
いずれも、中学生の時のコメントである。望外や僥倖というような言葉は、将棋界では、結構使う言葉らしいが、それにしても、報道陣に囲まれる中で、中学生が、さらっと使える言葉ではない。さらに2年を過ぎている現在、藤井語録は、どれだけ豊かに膨らんでいるだろうか。
新しい語録は?
コロナの影響で、対局が滞っている。今年度も勝ちまくっている藤井七段は、各棋戦で念願のタイトル挑戦に近づいている。
棋聖戦は決勝トーナメント準決勝 〔対佐藤天彦九段〕
王位戦は挑戦者決定リーグの最終戦〔対安部健次郎七段〕
王座戦は2次予選(※勝てば、決勝トーナメント入り)〔対大橋貴洸六段〕
竜王戦はランキング戦3組決勝戦 〔対杉本昌隆八段〕(師匠との決戦)
他に銀河戦、将棋日本シリーズ、そして昇級した順位戦と激戦が続く。
あの連勝がストップした後の言葉として、本書では、師匠杉本昌隆八段の次の言葉を載せている。
「まだまだ。これは映画で言えば予告編みたいなもんですよ」
さて、どんな本編が上映されるだろうか。
語録に刻まれるのは、どんな言葉だろうか。